One of Them〜第一幕〜『下書き』



依頼完了を報告して明日には報酬は口座に入るらしいことを聞いて解散となった。

サヤは商店街に寄り道をしていた。


「おじさん、醤油と砂糖…あと片栗粉ある?」

「…あぁ、ちょっと待ってな」

店の人はよそよそしくも頼んだ調味料を持ってきてくれる。

「はい、代金」

「おぅ、まいどあり」

(さて、今日は魚にするか…)

魚屋や八百屋などで今日の夕食を買って他に買うものがないかとブラブラする。

(………?)

その時シルフの緑ではなく、水色の軍服を着た2人が歩いてるのを見かける。

(……なんだ、ウィンディ国の軍隊か)

ウィンディはシルフと同盟関係にあるため無意味な警戒だと思ってそのまま家に帰った。


「……いただきます」

調理したものをテーブルに並べて食べる。

(あぁ、ずっとあんな感じのラクな仕事がいいな)

軍の一員になる限り、いつか戦争に参加など日常茶飯事になるだろうがそれでもサヤは望んだ。












「よっ」

「………………」

夕食を終え、お風呂に入って、いつもの和服に着替えて縁側でお茶してるとコウが目の前に現れた。

サヤは目を見開いて……首を傾げた。

「………なんか混乱してるね?」

「…ここは私以外の立入を禁じられてる筈なんですけど」

「上司だからいいんだよ」

サヤはコウの分のお茶を用意して、コウはサヤの隣に座ってお茶を飲む。

(着ぐるみ被ったまま自然に飲むとはなんと器用な……)

「ん?どうかしたかい?」

「その着ぐるみ外さないんですね」

「んー、別に外してもいいんだけどね」

そう言ってコウは普通に着ぐるみを外すもんだからサヤは驚く。

出てきたのは黒髪金目の男性。

「どう?カッコいい?」

「………黒猫みたいですね(シロクマの正体はクロネコだったと)」

「幼い頃はよく言われてたなぁ」

「………マイペースなところもそっくりですもんね」

「あははー、照れるねー」と笑いながら茶を飲むコウにサヤは「褒め言葉じゃないんですけど」とため息をつく。

そしてもう一度コウをまじまじと見ていた。


「ん?今度はなんだい?」

「いや、顔見られたくないから着ぐるみ被ってると思ってたのであっさり外したことに驚いてるというか……」

「あぁ、これは俺の趣味の一環みたいな感じだから気にしないで」

(趣味………どんな趣味?)



サヤはますますコウという人がわからなくなっていった。



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