パーフェクト・インパーフェクト
✧︎*。


『杏鈴』
『ごめん』


あれがあった日の丑三つ時に、ポコポコと送られてきていたふたつの吹き出し。

こんなものを寝起き、朝いちばんに見るのは本当にキツかったし、いつまでたっても返信できずにいる。


謝るくらいならあんなことしないでほしかった。


そう思うのに、そう冷たく突っぱねてしまうことは、どうしてもはばかれて。

だって、雪夜がこんなふうにわたしに謝ってきたのって、たぶんはじめてのことだと思うよ。


「だいぶん薄くなってきたな……」


ネットで調べていろいろ試した。

あっためるとか、冷やすとか、正反対のことばかりで本当に困ったけど、律儀に上からひとつずつ全部やった。


それでもここまで消えかかるのに結局1週間くらいはかかったよ。

そのあいだ、国茂家で夕食をごちそうになるタイミングはいつも通りあって、でも、仕事があるから、とてきとうに言い訳をして一度も行かなかった。


たぶん、ちあきおばちゃんには変に思われているはずだ。


だけどきっとわたしは、雪夜と顔を合わせるほうが上手に誤魔化せないと思ったんだ。


絶対に綻びは生まれてしまう。

そうしたら、いろんな関係が気まずくなってしまう。


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