君を好きになるって、はじめからわかってた。
好き?
「お前さ、俺みたいな奴嫌いじゃなかったっけ?」

 階段の手すりから上半身を乗り出し、私を見下ろす嫌な奴。
 久しぶりにその最低最悪な顔をみた気がする。

 もう1人の幼なじみ、高坂悠真だ。

 3年になってからクラスが変わり、彼の存在を忘れていた。
 そこそこ頭脳がいい変な奴だから、和輝よりもタチが悪い。

 小学5年の頃、私は高坂が好きだった……。


 ある日の放課後、2人で教室に残って係の仕事をしていた時だ。

 普通に下の名前で呼び合っていた私と高坂の会話を、6年の女子が廊下から聞いていて、わざわざちゃかしに入ってきた。

「なになに? 下の名前で呼び合って……好きとか?」

 高坂は背も高くて落ち着いていて、6年にも人気があったからその女子も彼のことが好きだったんだと思う。

 その言葉に急に恥ずかしくなって、帰るまで一言も話さなくて、次の日にはもう苗字で言い合うようになっていた。
 さらに別の日、高坂宛てのラブレターをたまたま拾ってしまって、こっそり机に入れてあげたこともあり、彼がモテるってことを改めて再認識させられ、結局片想いのまま卒業した。

 中学で高坂は数人の先輩と付き合うようになって、次第に私の想いも薄れていき、何も始まらないまま終わりを迎える。

 高校1年、まさに先輩のことで泣いてしまった時だ。

「やっぱ、俺にしとけばよかったのに」
「何が?」
「彼氏。今さらだけど、俺お前がずっと好きだったよ」
「何それ。こんな時にズルい。ホント今さらだよ……」
「なぁ、今から俺にしない?」

 それから不覚にも高坂をみつめてしまい、そのまま……と待った!!!

 私は、高坂の口に手をあてた。

「こんなのは違う。高坂とは……」
「バ~カ。冗談だよ」
「なっ、何それ!!」
「ほら、元気出た……だろ?」



 それ以来、高坂とははぐれてばかりで、彼女が出来たことも結菜から聞いた。
 相手が純粋な朋ちゃんだってことにも驚いたけど、あの高坂が真面目に付き合ってることに更に驚いた。
 



 
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