冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「とりあえずはこんなもんかな」

「そう。それにしても、好きな人と同棲だなんて、なんだかわくわくしちゃうねぇ」

「好きじゃないし、同棲でもないから! ただの家政婦だって何度も言っているでしょう」


 副社長の家に住み込みで働くことを報告してから、もう何度もこのやりとりをした。
 この母さんのにやけた顔にも見飽きている。

「でも、この話が決まってから楽しそうだよ」

「まあ、新しいことを始めるっていう点ではワクワクしているかもしれないけど。……でもこの家を離れるのはちょっと寂しいかな」


 木製のタンスに勉強机、シングルベッド。日に焼けたピンク色のカーテンに、高くない天井。どれも古くなっていて、ところどころに傷や汚れができている。



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