四つ葉のクローバーを贈られました
プロローグ



幼稚園の時、姉妹同然のように仲が良かった女の子がいた。


いつも私の後ろをくっついてくる女の子に、一人っ子だった私は最近周りに増えてきた弟や妹がいるという友達の影響を受け、その子をまるで自分の妹のように世話を焼くのが日課になっていた。




しかし、ある日突然、私は父親の仕事の都合で引っ越しを余儀なくされた。


その話を引っ越す間際に先生からの話で聞いたその子は泣いた。


それはもう激しく。


持病の喘息発作がでるくらい。



それでも引っ越しは大人の事情。


簡単に無くなるものではないことはさすがの幼い私達でももう分かっている。




「圭(けい)ちゃん、これあげる」




幼稚園最後の日にその子からもらったのは、四つ葉のクローバーがラミネートされた栞。




「いいの?」


「うん。私だと思って、大事にしてね?」


「うん!」




薄情にも大人になった今ではその子の顔も名前も思い出せないけど、この四つ葉のクローバーの栞だけは今でも手元に残っている。


もう少しで着陸するという機長のアナウンスに、私は途中まで読み進めていた医学書にその栞を挟めた。


丸々二年ぶりの日本に、なんだか色々と考えさせられるものがあり、近づく陸を窓からぼーっと眺める。


直(じき)に僅かな揺れが訪れ、イギリス・日本間のおよそ半日の旅は終わりを告げた。


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