欲望の飴と飴売り少女
しばらくしてあたしも帰り始めた。
本当なんなのあの子。包み紙に入った飴を見た。

願いが叶う飴。本当に叶うなら、美人になるとかかな。川野くんの彼女になるとか…夢はいっぱい出てくる。


絶対こんな飴で願いが叶うわけない。そんな簡単に叶ったら夢なんて言わない。

目の前の雑貨屋さんから私服の男の子が出るところだった。

その男の子は、川野くんだった。
「木原さん?」と言ってこっちに来た。

胸が音を立てた。
「あっ、か、か、川野くん」
私服の川野くんは新鮮で見惚れてしまった。あたしは随分ぎこちない喋り方になった。


「どうしたの?そんな話し方して」
川野くんはあたしのぎこちない話し方を見て笑った。


その笑顔はかっこよすぎる。



「えっとね…「待ってよ〜、亮太…あれ?木原さん?」


「そ、そうだけど…」


「木原さん寄り道してたのー?」

山下が出てきた。なんで、山下はいつも邪魔するんだろう。

山下はそんなあたしの気持ちに気づかず川野くんにベタベタと頭を軽く叩いたり腕を組んだりとしている。

あたしが川野くんと話していたのに何で邪魔するんだろう。

嫌だ。いつも他人のことなんて考えなくて…私が川野くん好きなの気付いてほしい。
うざい、うざい。


雨が降ってきたのかと思ったら私の涙だった。

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