Elevator Girl
一方的な電話が切れる。



ばか。
それで、私を試してるつもり?

もうとっくに、選択肢はないのに。


…このコートじゃ寒いよね、でも今すぐに逢いたい。

逢って抱きしめてもらったら、きっとあたたかい。






駆け足で店を出て、エレベーターに乗った。


「お店、おめでとうございます。お帰りですか?」

「ありがとう、今から北海道に行ってきます!」


言い切ると、エレベーターガールの日向さんは、驚いたように目を丸くした。


「す、すごいですね!楽しんできて下さい」


「うん。日向さんも、またのお越しお待ちしております。

…次は、フォンダンショコラでもどうかしら?」


意味ありげに目配せすると、日向さんの頬が赤く染まった。

「お気をつけて、行ってらっしゃいませっ!」





開店初日で疲れているはずなのに、急ぐ足は軽やかだった。


変なの、
さっきまで待っていたのに、今度は急いでる。


相模くんは無茶苦茶で、子供みたいに我が儘な人だ。

でも、その我が儘に付き合うのも嫌じゃない自分がいる。




……最高のバレンタインになればいいな。


左手にフォンダンショコラの袋を握りしめて、
もう一度駆け出した。                                                                                                                                                                            
< 45 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop