さよならメランコリー
彼女のいくら食べても華奢なまんまの体が憎い。彼女の透き通るような生まれつきの白い肌がずるい。彼女の小顔マッサージなんてしなくてもいい小さな顔が、トリートメントなんてしてないくせにさらさらの黒髪が。
……打算なんてしなくても私なんかよりずっとずっと可愛い彼女の性格が、羨ましい。欲しくて欲しくて、たまらない。
全部手に入れたら、彼もほんのちょっとは、彼女じゃなくて私を見てくれるのだろうか。私の誕生日を間近に、そわそわしてくれるのだろうか。
……なんて、そんなことを考えても虚しくなるだけだってわかっている。それなのに、嫌なことばっかりが頭を駆け巡って止まらない。 ……ああ、気分が悪い。
「私の誕生日は、忘れてたくせに」
吐き出した言葉をドロドロになったチョコレートに混ぜ込む。すると、涙が一粒こぼれ落ちた。 慌てて拭うと、それを合図にしたかのように、ぼろぼろと次から次に落ちてくる。
「っ、はは、かっこわるっ……」
やっぱり女の子は恋をすると可愛くなるなんて言うのはおかしな話だ。言い始めた人は、大嘘つきに決まってる。
だって、私だって恋をしている女の子でしょう? それなのに、少しも可愛くなんかならない。むしろ恋をしてしまってから醜くて惨めになっていくばかりだ。
上手くなんかいきませんように、告白なんて一生できませんように。 ずっとずっと大好きだったはずの彼女と、今も大好きなはずの彼の不幸を願ってる。
〝こんな私は嫌だ〟ともがいても、愛しい人たちの不幸を願うことでしか、私は今、私を保てない。