さよならメランコリー
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この恋は、二度目の恋だ。

中学一年生から三年生になる直前まで、私にはずっとすきな人がいた。 だけどそれは、ただじっと見つめているだけの密かな恋だった。 彼ととなりの席になっても、彼に彼女ができても、彼が転校すると知った日も。臆病な私は最後の最後まで、何もしなかった。

そのくせに、私はしばらくずっと彼を忘れられなかった。 すきだと思うだけで、何もしなかった二年間を後悔しては泣きそうになった。

頑張ったって彼の恋人になんてなれなかったかもしれない。だけど、頑張ったらチャンスはあったかもしれない。すきだと言えていたら、ほんの少しでも彼の心に残る女の子になれていたかもしれない。

私は何もしなかった。彼の物語のヒロインどころか、登場人物にだってなれなかった。

そんな私を見兼ねたカナちゃんは言った。


「トウカ、次の恋は頑張ろうね」


その言葉を聞いて、私はもう涙を我慢することができなかった。カナちゃんは珍しく、私が抱きついても嫌がらなかった。鼻水をつけたときはさすがに怒っていたけれど、最後は「次はないから」って呆れたように笑ってくれた。

だからね、カナちゃん。 私、あの頃からオシャレもお化粧も、お料理も。それから、男の子に話しかけるのだって。

今までの私にはできなかったこと、少しずつ頑張ったよね。 変わっていく私を、いつだってとなりで見守ってくれていたのは、カナちゃん。あなただった。
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