年上の彼。
2.上司
____上司。





屋上へ続く階段を駆け足で登りドアを開けた。


「はぁ…… またここでサボってるんですか?」

「もう見つかっちゃった?」

てへっ と笑顔で振り向いた私の先輩且つ上司。

「………可愛く言ってもダメです。課長が探してましたよ?」

「だよね〜 そろそろ来るかなって思ってたよ」

「私を使うの辞めて下さい」

「でも絶対来てくれるよね?」

「みんなが私に聞いてくるんです」

「あはは〜 ……だろうね。とんだ先輩につかれちゃったね?」

へらへらしている私の教育係だった成沢先輩。

入社してから約一年間、先輩に手取り足取りたくさんの事を教えてもらった。

第一印象はチャラい人だと思っていたが、見た目に反してかなりできる男で。

こんな風にサボっていても仕事ができるからある意味困ったもんだ。

教育期間が終わってからもこんな感じ。

課長が直々に「成沢を監視してくれ」なんて言うから。

他の先輩達からは『夫婦』と言われるほど成長した。

もちろん、かかあ天下だ。

「ほら、行きますよ?」

「え〜 どうしよっかなー?」

「後輩を困らせないで下さい」

「じゃあ、千秋ちゃんが夜ご飯付き合ってくれるなら……

「ご遠慮します」

先輩は無駄にルックスまでもいいから正直モテる。

こんな風に色々な人に気さくにお誘いしているのだろう。

きっと誰もがイエスと首を縦に振るのだろうけど私は絶対に行かない。

答えは一つ。

成沢先輩の事が好きだから。

勝手に勘違いして振られてぎこちなくなるくらいなら、このままの関係で近くにいたい。

性格がだいぶひね曲がってるな。
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