その件は結婚してからでもいいでしょうか
「ティーンズラブっていう、女性向けのエロを描かないかって話が来たことがあって。まあ、そのために練習というか」
「桜よりこ先生が、エロなんて、ありえません!」
美穂子は叫んだ。
「まあ今はもう結構名も売れたし、描かないけど。昔は来る話は拒まないでしょ?」
「考えたくありません」
「大丈夫だって。ボツになったし。どうしても願望が出て、女の子のおっぱいをでかく描きすぎるらしいんだよ。それがNGだったみたいで」
おっぱいをでかくって……。
「エロオヤジッ」
美穂子はプイッと横を向いた。
どうして男の人って、こうなんだろう。
不潔! 不純! 最低!
「ははは」
先生が弱々しく笑った。
「だけどさあ。美穂ちゃんって、えらく潔癖だよね」
「だって、必要のないことです」
そう言うと先生がまた「はは」と笑う。
「じゃあ、自分はどうやって生まれてきたと思ってんの」
「かっかっ、考えさせないでくださいよ。生々しいっ!」
美穂子は自分の顔が真っ赤か、もしくは真っ青か、どっちかになっていると思った。
「今までの彼氏とはしなかった?」
ストレート、エロ発言。
美穂子はかあっと頭に血がのぼる。
「当たり前です!」
「じゃあいつすんの?」
無邪気を装い、目をキラッキラさせて聞いてくる。
「そ、それは。結婚、とか、したら……」