その件は結婚してからでもいいでしょうか

いつもは隠れているおでこが全開。切れ長の目もトロンとしている。

あれ、こんな顔だっけ。

美穂子はなんだか落ち着かなくなった。

「隣に行ってきます」
美穂子は早く逃げたくて、慌てて立ち上がろうとした。

「待って」
ガシッと手首を掴まれる。

ボワーッと、血が瞬間的に沸騰した気がした。

「なっ、なん、なにして」
ろれつが回らない。

「待って、待って」
先生がむくりと起き上がる。

信じらんない。なんで裸で寝てる?

先生は美穂子の手首を掴んだまま、目をゴシゴシこすった。

「着て! 先生!」
「……安心してください。履いてます」
「違うよっ。上! シャツかなんか、着てください」

先生がポカンとした顔で美穂子を見る。

「あれ? 上が裸もダメなの? じゃあ、プール行けないじゃん」
「いきませんっ」

先生は「はいはい」と嫌そうにつぶやくと、床に落ちているシャツを拾った。シャツを着るとき、やっと美穂子の腕を離す。

「美穂ちゃん、あのね」
シャツを着ると、ベッドから足を下ろす。

まさか、パンツしか、履いてない。

「立ち上がるな!」
怒りに任せて怒鳴った。

「ああ、そうだね」
先生は布団を腰にぐるぐる巻いて、美穂子に向き直った。

「誰にも言わないでね。俺が男だって」
寝癖だらけの頭で、先生は言った。
< 31 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop