その件は結婚してからでもいいでしょうか
「もしよければ、わたしが買いに行ってきましょうか」
先生が驚いた顔をする。
「ちょっとアパートに寄って、自分の画材とその他もろもろ、持って来たいなあって思ってたので、そのついでに」
「じゃあ、一緒に行こうか」
先生は「いいこと思いついた!」というように、顔を輝かせる。
「えっ、でも」
美穂子は警戒した。
「荷物持ちが必要だろう? それに俺もたまには外に出たい」
「お仕事平気ですか?」
「平気ですー。ちょっとぐらいの間なら」
先生はすっかり出かける気になったのか、うきうきと支度をし始める。なんとなく美穂子も拒否しづらくなってきた。
確かに荷物持ちは必要だけど、先生にドキドキした自分を戒めるため、一人の時間が必要だと思ったのに。
「じゃ、出発!」
先生は準備万端でソファに座る。薄手のダウンの下にパーカー、デニムといういでたち。
「先生、わたしがまだ出発できません。後片付けと洗濯を終わらせてからでいいですか?」
「もちろん。家事、ありがとう」
先生はニコッと笑うと、ソファに転がった。
すぐに「ぐー」と、小さくいびきをかき始める。
この人は、描いてないときは、まったくもってダメな人なんだ。
美穂子は軽くため息をついた。