その件は結婚してからでもいいでしょうか

小さなテーブルを出して、短いランチタイム。

お弁当は毎回、朝オーダーの電話をして、届けてもらう。面倒臭いからいつも四人同じメニュー。今日は焼肉弁当だ。

「悠馬くん、勝負に出たね」
吉田さんが、丸い顔でご飯をほおばる。

「優等生が見せる、男の顔。やばい、惚れるよ」
小島さんが頷いた。

「三次元の彼氏がいるのに、悠馬くんにも惚れるって、おかしくありません?」
吉田さんが「しんじらんない」という顔を見せた。

「悠馬くんは別物でしょ。だってエッチできないし」
小島さんがにやりと笑った。

「エッチ! 淫だ〜」
吉田さんが恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。

「淫らとかじゃないって。本能だもん。ねー、美穂ちゃん」

小島さんから突然ふられて、美穂子は「へ」と間抜けな音を口から出してしまった。

「そ、そうですかね?」
しどろもどろになりながら、美穂子は答えた。喉にごはんがつかえる。

小島さんはにやにや笑いっぱなし。先生を彼氏と誤解したままなのだから、仕方ないのだけれど。

「山井さんは? あんまりこういう話題、入ってこないけど、興味あるなあ」
小島さんが、今度は山井さんに話を振った。

「わたし?」
ひっつめメガネの山井さんが目をあげる。

「わたし、桜先生なら三次元でもオッケー」
そう言った。

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