冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「もしかして、香弥さんと由佐が話をしているのを見て、嫌な気持ちになった?」

「す、すみません」

「ああ、いや、そういうのってあってもおかしくないよ。でも、あまり気にしすぎるのはよくないと思う。自分の中でため込んじゃうと、自信を無くしたり悪いほうにしか考えられなくなっちゃうし」

三坂さんが穏やかな声でそう言うと、エレベーターがやってきてドアが開いた。
考え込んでばかりだとよくない。深く息をついたら、少しだけ気持ちが楽になっていくように感じた。

「……で、俺となにを話したかったの?」

「ええっと……いいえ、なんでもないんです」

「お店まで来たのにそんなわけないだろう?」

エレベーターに乗り込み、階のボタンを押してドアが閉まると、三坂さんが優しい表情で尋ねてきた。
三坂さんはわたしの気持ちをいろいろ察してくれているみたいで、隠し事はできないようだ。

「……由佐さんと香弥さんのこと、三坂さんに聞いてみようかなって思ったんです」

「そっか、なるほどね。香弥さんは、この前話した仲のいい二つ上の先輩だよ。……ていうか紘奈ちゃん、気になるなら由佐に聞いてみればいいんじゃない?」

言う通りで、本人に直接訊いたほうがはっきりするとわかっているのに、どうしてもできなかったのだ。わたしって、思ったよりも意気地なしだったみたい。
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