冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「うわぁ、従業員から連絡もらって慌てて来たよ。由佐、香弥さんいらっしゃい。それから……紘奈ちゃん?」

近くで聞こえた声に、ビクッと肩を揺らしたわたしは、ゆっくりと顔を上げた。するとちょうど三坂さんがテーブルまで来たところで、わたしの顔を見た瞬間、さっとカウンターにいるふたりを隠すように立った。

それは、由佐さんと香弥さんからもわたしを隠すようにしてくれたのかもしれない。

「どうした? 今日はひとりで来たの?」

優しい声を出しながら心配そうな顔をする三坂さんに、心の緊張が解けそうになってしまう。

「っ……、今日は、三坂さんと話したくて来たんです、でも、ちょっと……もう、帰ります」

「……わかったよ。じゃあ、エントランスまで送ってあげる」

声が震えるのを誤魔化すことができそうになくて、大丈夫です、と言うことができなかった。席から立ち上がったわたしと一緒に歩きだした三坂さんは、由佐さんと香弥さんに「ちょっと待っててね」と愛想よく笑っていた。

由佐さんがこちらをじっと見ているような気配がしたけれど、わたしは小さくお辞儀をしただけで彼の顔を見ずにお店を出た。

「大丈夫? なんだか辛そうな顔をしていたけど」

エレベーターの前にやってくると、三坂さんは再び心配そうな表情をする。
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