冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
……怒っていた? 由佐さんのことを考えているとか、気になるとか、余計なことを言っていて、会社でそういうことを言うのはおかしいのに。

馬鹿だ……わたし。気持ちばかりが前にいってしまって、もっと言葉を選んで話をするべきだった。
彼の態度に胸が痛み、しばらく給湯室から出られずぼうっと立っていたが、ここまで言ってしまったのならもう引き返せないし、ちゃんと気持ちを伝える機会をもらおう……と焦ってデスクのほうへ向かったが、課の人たちが戻り始めていて、由佐さんに予定を訊けるような感じではない。

どうしよう……と、困っていたとき、

「俺、どこも行かないからな」

自分のデスクでパソコンを操作していた由佐さんが、声を張って課のみんなを驚かせた。
一瞬ぽかん、としていたけれど、言葉の意味は噂のことを否定しているんだと気づきはじめたみんなは、「よかったぁ」と安堵した声をだしたり、ほっと息をついている。

「ほら、やっぱり課長はそんなこと考えてなかっただろ!」

谷池さんは、最初から信じていましたよ、と得意そうに言いながら午後の仕事の準備をはじめている。

みんな、由佐さんが他の会社に行くなんて信じていなかっただろうけど、やっぱり本人の言葉を聞くと安心するのだ。

オフィスの空気はすっかり明るいものとなり、わたしもよかったなと思ったけれど、まだ自分の気持ちを彼にしっかり伝えられていないことに焦りが残っていた。
由佐さんの気持ちも、知りたい。素直になれなかったり、好きって言うことを迷っていたけれど、このままでいることはもうできないとさらに思うようになった。
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