冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
乗ってからにしようと、逸る気持ちを静めながらエレベーターの中を見たときそこには香弥さんがいて、わたしは一瞬体が動かなくなってしまった。

「あ、由佐くん……と、事務の女の子?」

微笑んだ彼女に、わたしは小さくお辞儀をした。由佐さんも「こんばんは」と挨拶をして、エレベーターへ乗り込む。わたしも、それに続いた。

「打ち合わせ帰りですか?」

「そうなの。いつもね、わたしが出向きますって伝えているの。このビル内の飲食店って美味しいところばかりだし、とくにカフェのコーヒーにハマっちゃって」

由佐さんに会いたいから、このビルに来ているのではないだろうか。
そんなことを考えてしまうと、穏やかには聞いていられない。

「そうだ、由佐くん。このあと少しだけ付き合ってくれないかな?」

「いや、今日は……」

そう言った彼は、ちらっとわたしのほうを見た。もしかしたら、先ほどわたしがなにか言いかけていたと、気にしてくれているのかもしれない。
ちょっとだけ心が明るくなったが、香弥さんは引かなかった。

「お願い、どうしても話がしたいの。少しだけ……駐車場まで、わたしを送っていってくれない? その間に済ませるから」

香弥さんはわたしに視線を移して、意味深に目を細める。そして、すがるような彼女に仕方ないと思ったのだろうか、由佐さんは「わかりました。駐車場まで付き合いますよ」と言った。

そしてわたしに、「エントランスで待っていてくれ」と声をかけ、ふたりは駐車場へと降りて行く。
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