冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「社内の女たちが悔しがるだろうなぁ。ちょっと噂になっているらしいよ。営業の事務が最近市崎課長と親しそうにしているって」

「それは、結構前からありますよ。同じ課で仕事をしているのが羨ましいという感じでコソコソと……」

「でも、恋人ってなるとまた違う感情があるんじゃない? 気をつけろよぉ、事件にならないといいな」

こ、怖いことを言わないでほしい……! 「冗談だよ、冗談」と、笑う谷池さんは面白がって言っただけのようだが、少し周りの様子を気にしたほうがいいなとわたしは思った。

事件なんていう物騒なことは起こらないだろうけど、陰口などはひどくなるかもしれない。付き合っているという噂が広まったら覚悟はしておこうと考えながら、わたしはデスクを立った。

資料室に、ファイルを戻しにいかないと。
そばにあった段ボールを持ったわたしは、上の階にある資料室へと向かった。

資料室は総務課の人たちが定期的に掃除をしてくれたり、整理をしてくれたりするので、綺麗で資料も見つけやすい。よいしょ、と段ボールを床へ置いて資料室のドアを開けると、どうやら今日は整理の日だったのか、資料の棚で作業をしている男性がいて、わたしは頭を下げてから中へと入っていった。
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