冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
コソコソ噂したくなるくらい、由佐さんは人気なのだ。前も外部の人なのに美人と一緒にいたって香弥さんとのことが噂になっていた。
わたしと由佐さんが一緒に昼食をとったり、帰るところなどを目撃されているみたいだから、少し目立たないようにしたほうがいいのかな。

ちょっとわたし、気にしすぎ? 恋人なのは事実だから、堂々としていたいけれど……ちらちらと視線を感じるのは、あまり気分のいいものではない。

「――紘奈、おい、」

通路を歩いていた途中、後ろから手首を掴まれてはっとしたわたしは、すぐに振り返る。しかし、わたしの手首を掴んだのが由佐さんだったので、周りを気にして思わず手を引っ込めて彼を振り払うようにしてしまった。

「あ……ご、ごめんなさい、びっくりして……」

「……いや、声をかけてもこちらを向かなかったから、悪い、急に掴んで。おはようって言いたかっただけだよ」

「おはようございます……」

ふたりで通路を歩いているのを、由佐さんに好意を持った人に見られていないか気にしてしまうわたしは、彼のほうへ顔を向けないようにして、あまり近づかないようにしてしまう。
あくまで、上司と部下でたまたま朝、通路で一緒になっただけ。そういう雰囲気を醸し出すようにしながら、わたしは歩いていた。
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