冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「由佐さん、あの、」

「……俺はただ、社内では谷池たちみたいに君と普通に挨拶したり、笑って話をしたいと思っていたんだけど」

由佐さんの言葉に顔を上げたわたしは、怒っているような、傷ついているような顔をしている彼を見て、ズキズキと胸が痛みだす。

「……わかったよ。もうやめておく」

わたしから顔を逸らし、先に課へと向かった由佐さんの背中を見て、後悔ばかりが湧き上がっていた。

もっとゆっくり話ができるときに言えばよかった。
朝の時間がないときに、あんなことを言ったら説明するタイミングを逃してしまうじゃないか。

きっと、わたしのことを見て陰でコソコソ言う人たちは、由佐さんの前ではそういうことをしないのだろう。
だから彼は、噂くらいでと思っているのだと思う。そういうことも話してから、目立たないようにしてほしいって伝えればよかった……。

どうして、上手くいかないの。
わたしがやめてほしいと言ってから数日間、由佐さんは仕事以外のことで声をかけてくるようなことがなくなった。

以前は一緒に休憩時間を過ごしたり、お昼ご飯を食べていたのに、急に寂しくなってしまった。
やめてほしいなんて勢いで言ってしまったけれど、やっぱり、普通に話したりしてほしい。


「夏穂子……」

『なに、どうしたの? 元気ない声だしちゃって』

自分の不器用さに呆れたわたしは、お昼休み、休憩スペースに人がいないのを確認してから、しょんぼりと香穂子に電話をかけていた。
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