冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「まったく……」

由佐さんのデスクのそばでわたしがほっとしていると、彼は眉根を寄せながらため息をついていた。さっき書類作成を手伝おうとしてくれた由佐さんは意外で、ちょっとうれしかったなと、ぼうっと彼のことを見ていたら目が合ってしまった。

「なに見てんの?」

「あ、えっと……ありがとうございました。前の会社で上司には理不尽な怒られ方したり、話を聞いてもらえなかったから、市崎課長の対応がうれしかったです」

素直に思ったことを言ったわたしに、由佐さんは驚いたような表情をした。いつも性悪な人だと思っている相手だけれど、仕事では上司だから感謝は伝えたほうがいいと思ったわけで、わたし、なにか変なことを言った?

「……君って、真っ直ぐな性格だよな。ときどき予想できないこともするし、面白い」

「お、面白いってなんですか」

「そのままの意味だよ」

デスクに頬杖をついてふっと笑みをこぼした由佐さんに、ドキッとした。ただでさえかっこいいのに、そういうやわらかい笑顔を向けるなんて反則だ。

赤くなってしまった頬を隠すようにうつむいたけれど、ちらちらと由佐さんのほうを窺っていたら彼の口もとがさらに緩んだので、もっと恥ずかしくなってしまう。
< 45 / 153 >

この作品をシェア

pagetop