冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
わたしをからかう彼の冗談が今日は一段とたちが悪いと思うのは、気のせいだろうか。

もしかして、ふたりで出掛けようと言い出したのはわたしをたくさんからかうため……休日の暇潰しにしようとしていたりして。

由佐さんに不信感がたっぷりでムスッとしていると、彼は勝手に話を戻した。

「この辺りなら水族館か、公園で観覧車とか」

「……観覧車って乗っているとき、なにを話せばいいかわかりませんよね」

「じゃあ、観覧車で」

「どうしてですか!」

わたしの反応を面白がっている由佐さんは、「どっちも行こう」と言って話をまとめ、行き先へと向かう。

もう本当に、ペースを乱されてばかりだ。いつのまにか緊張は和らいできたけれど、由佐さんと休日を過ごしているという意識はなくなるわけではない。
こんな感じでわたし、大丈夫かな……。

落ち着かない気持ちで三十分ほど走ると、車は水族館にたどり着いた。近くに展望施設や公園、観覧車があってカップルのデートスポットとして雑誌などにも載っている場所だ。

駐車場に車を停め降りると、由佐さんと並んで歩きだす。
水族館に来るのは久しぶりで、ちょっとワクワクしてくる。

入園券を買ってくれた由佐さんにお礼を言って館内へと入っていった。
彼と一緒だということにドキドキしながら、とにかく先へ進んでいこうと考えていたが、ペンギンたちを見つけて思わず「あっ、可愛い!」と言いながら近づいていった。
< 79 / 153 >

この作品をシェア

pagetop