冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「どうしたんだ、ひとりで来たのか?」

こちらへ近づいてきた由佐さんの問いかけに答えようとするのに、喉の奥がきゅっと閉まったような感じがして、声がでていかない。

なんで香弥さんと一緒にいるのだろう。由佐さんの後をついてきた彼女が、わたしに微笑んだあと彼の腕を触った。

「由佐くん、こっち。純くんいると思ったのに、まだ来ていないんだって」

「……あいつ、いつも店にいる時間バラバラだから」

由佐さんは答えないわたしを気にしつつも、香弥さんに腕を引かれて一緒にカウンター席へと座った。
わたしはふたりの並ぶ背中を見て、息苦しさを感じる。

由佐さんの態度は、香弥さんに対して一定の距離感のようなものがあるようだけど、この前と比べたら親しそうなものだ。
香弥さんが言っていたように、少しずつ昔の関係を取り戻しているの?

楽しそうに会話をする香弥さんの声がこちらにまで聞こえてきて、うつむいたわたしは膝の上で拳を強く握りしめていた。

わたしが知らない、由佐さんと三坂さんと一緒にいた大学時代の話。サークルの話をしていて……ああ、そうか、三坂さんが言っていた彼と親しくしていた女の先輩って、香弥さんのことだったのかもしれない。

もうここにいるのが嫌だ――。
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