霞村四丁目の郵便屋さん
ほんの少し前までは、医者になると思っていた。

当然塾なんてない霞村で、都会の進学塾に通うヤツらを上回る成績を取らなければならないのは至難の業。
それでも、どうしても医者になりたかった俺は、有名進学塾のテキストを取り寄せ、必死に学んだ。

時々大きな都市で行われる模試にも通い、着々と医者の夢に近づきつつあったのに……もうどうでもよくなってしまった。


「いや、別に、ない……」


そんなことを考えていたせいか、素っ気ない言い方になってしまう。
転校してきて初めての日に、冷たくされたら辛いだろうに。


「ごめん。俺のことより、みやびだ。みやびは霞村のどこに住んでるの?」


あんな小さな村なのに、誰かが越してきたなんて話は聞いていない。
そんなことがあれば大騒ぎになるはずなのに。


「私は……」


一旦口を開いたみやびは、その先を言いよどみ窓の外に視線を送る。


「誰かん家の孫、とか?」
< 18 / 56 >

この作品をシェア

pagetop