イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
クリーム色のスーツの中の体はしなやかで美しい。メイクも完璧で、四十そこそこにしか見えないが、和美と同い年のいわゆる美魔女タイプだ。
肩に届く髪は毎朝夫の手でブローされ、今日もふんわりとカールしており、つやつやと輝いている。
性格はどちらかというと男勝りで、クールだ。
だから単刀直入に尋ねた。
「あのさ……なんで直倫なの」
「逆に聞きたいわ。直倫くん以外に誰かいるの?」
「ぐっ……」
亜子はすさまじいスピードで新聞をめくりながら問いかける。
「二十八にもなって恋人ひとり持ったことないなんて、どうかと思うのよ」
「ううっ……」
「まぁ、世の中には他人に恋愛感情を持てない人間だっているわ。それは仕方ない。でも遠子、あなた違うでしょう。会社の先輩に認められたくて、好きだったから死ぬ気でお仕事頑張っていたんでしょう」
「ひょえっ!」
変な悲鳴が出た。
「ななな、なんで知ってるの!」
片思いの相手に褒められたいそれだけで仕事を頑張っていたなんて、いくらなんでも恥ずかしすぎる話ではないか。
親とはいえ知られたくない感情だ。