死にたがりは恋をする

第一章 死にたがりは愛される

　{学校}　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　大橋カイト、通称死にたがりは、今日も死にたがっていた。

　というのも、母親からの虐待のせいだけではない。同級生からの冷やかしのせいもあった。

　私立マディー高校の正門をくぐり、下駄箱へと向かう。

　すると、下駄箱の中には雑巾の山が入っていて、シューズが汚れて埋もれていた。困惑した表情を浮かべると同時に、周りからクスクスと堪えた笑い声が聞こえてきた。

｢またか。｣

　なんでイジメが起こるのか。それは上からのストレス、誰にでも分かりきった簡単なことだ。しかし、自分がなぜイジメの対象になるのかはいつ考えても分からなかった。

　そんなことを考えながら下を向いて歩いていると、まえに誰かが立ちはだかる気配を感じた。

　この高校の餓鬼大将だった。

｢よお、死にたがり。また死にたいのか？ｗｗ｣

　見下すような笑みを浮かべたゴツい面に、冷ややかな眼差しを向ける。

　こういう奴らはいらつくのだ。しかし、いくらイジメられてるとはいえ、いちいち喧嘩をうるほど馬鹿で低脳な人間では無い。もちろん、真顔で通りすぎる。

｢無視すんなよ、糞が！｣

　喧嘩っ早くはないのだが、さすがに糞は頭に来た。振り返ると、キッと睨みつけた。

　一応顔は傷がないので、整っている。昔、大手のトリカウ事務所のオファーも受けたことがあった。まぁ、体の傷を見せて断られたのだが＿＿。

　その目をみて相手はビビったようで、舌打ちをしてクラスへ逃げるように入っていった。

｢いつも、こんななんだもんな。｣

　はぁとため息をついたが、そんなんで気が晴れる訳でも無いのだ。下を向きながら教室へと入った。