お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

そして、おそるおそる開こうとすると、開ききる前に。



「花岡にしては珍しいな……。まあ、そんなときもあるだろうけど、しっかり勉強しろよ?」


「っ」




先生の言葉にハッとする。


この言い方って、まさか──────




ちらりと開いたテスト用紙の端に書かれた数字を確認して、思わず声をあげそうになった。





「今日から一週間みっちり補習だ。放課後、教室に残って待っているように」



「……っ、はい、」





赤ペンで書かれた数字は 38。

それは、もちろん赤点なわけで。




……あと2点だったのになぁ、なんて。


でも、赤点は赤点だもの、受け止めなきゃ。





「はい次、早坂────」




先生の声を背中に聞きながら、自分の席に戻る。



座った瞬間に項垂れた。


受け止めなきゃって思うけど……!
それより、悲しい気持ちの方が大きい。




涙目になりながら、はぁ───っ、と大きくため息をつくと、ちょうど前から夏奈ちゃんが戻ってきて。




「あっれ、ひまり珍しく落ち込んでるね?」




私の様子を見て、驚いたように首をかしげた。




「夏奈ちゃん〜〜〜っ、今日から補習だって〜……」




そんな夏奈ちゃんに泣きつくと、夏奈ちゃんは目を丸くした。




「え!?ひまり、入学してからはじめて赤点じゃない?」



「うん……」




そんなに成績は良くないけれど、いつも大体平均点くらいは取れていたから。



だからこそ、この点数は気持ち的にこたえる。




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