お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


「早坂の言う通り。よく似合ってるよ?」


えっ?
だ、だれ……?

いきなり話しかけてきた聞きなれない声に、人見知りの私は身体を思わず縮こめて夏奈ちゃんの背中に隠れた。


すると、


「誰かと思えば、浅野じゃん!」


夏奈ちゃんが驚いたように、その人を指差した。

あ、あれ?


「そーそ。俺、浅野だよー。花岡、そんなに怖がらないで?」


あ………、浅野くん……?!



「ご、ごめんなさいっ、」


ひょこっと、夏奈ちゃんの後ろから身体を出して頭を下げた。

隠れるなんて、浅野くんには失礼なことしちゃったな……。



「なんだ浅野くんかぁ……。よかったぁ~」



よかった、ほっとした。

だって、知らない人に声かけられたのかと思って、本気でびっくりしちゃったから。


目の前で苦笑する、黒髪の彼は
浅野 翔太(アサノ ショウタ)くん。

私たちと同じクラスで、学級委員を務めている爽やかで人望も厚い彼は、人見知りな私にも積極的に話しかけてくれる唯一の男の子と言っても過言ではない。

そして、みっくんみたいに浮いた噂もなく、夏奈ちゃんいわく “硬派なイケメン” として女の子たちからも支持されているらしい。


………私は、あんまり詳しくはないんだけれど。


< 74 / 387 >

この作品をシェア

pagetop