あまりさんののっぴきならない事情
 





 結局、あまりは、桜田たちに机を片付けるのを手伝ってもらった。

「今日もよく売れました」
と桜田と機嫌良く戻ってくると、秘書室の前に、今、悪い奴だと罵ってしまった海里が居て、思わず、逃げそうになる。

 海里は、これから出かけるか、帰ってきた風な身支度をしていた。

 うーむ。
 トレンチコートも良く似合っている。

 だから、きっと悪い人に違いない……。

 だって、こんなに格好良かったら、どんな女性でも簡単に騙せるに違いないから。

 そんなことを考えていたら、つい、先ほどの桜田みたいに物陰に隠れてしまっていた。

 だが、海里は相変わらず偉そげに、
「なに隠れてんだ。
 ちょっと来い」
と命じてくる。

「ちょっと私用で視察に行くことになったんだ」

 私用で視察ってなんだ? と思っていると、
「ちょうどプレミアムフライデーとやらだし。
 俺は三時から休みを取って出かける。

 お前、ついて来い」
と言い出した。

「は?」
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