あまりさんののっぴきならない事情
 なんですか、その決めつけは……。

 そして、はしゃぐと思っているのなら、譲らなくてもいいじゃないですか。

 さっきから親切なんだか、喧嘩売ってるんだか、わからない人だな、と思っていると、海里が、

「いいから、早く乗れ。
 まだ後ろに人が居る」
と言ってきた。

 自分で最後かと思っていたのだが、後ろに、静かに、おばあさんが立っていた。

 すっ、すみませんっ、と頭を下げて、慌てて、海里が譲ってくれた窓際の席に座る。

 海里もおばあさんに軽く頭を下げると、あまりの席から、ひとつ空けて、通路側に座った。

 三人掛けだったからだ。

 ……間を空けるために、こっち側の席にしたのかな? と反対側の座席を見る。

 そちらも空いているが、二人掛けの席だった。

 すると、あまりの視線に気づいた海里が、
「なんだ、向こう側がよかったか?」
と訊いてきた。
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