あまりさんののっぴきならない事情
「いや……日本、そんな地平線が見えるような場所ないんで。
 物に遮られて、そもそも見えませんが。

 でも、こんな知らない場所で、知ってる人に会うとちょっと嬉しいですね」
と思わず、愛想よく手を振ったあとで、

「あ、しまった」
と言うと、

「なにがしまっただ?」
と言われた。

「いや、フランスの人に、おーい、って手を振ったりして、大丈夫ですかね?
 外国って、日本とジェスチャー、意味が違ったりするじゃないですか」

 射殺されませんかね? と言うと、阿呆か、と言われる。

「そもそも、銃持って歩いてないだろうが」

「いや、何処かに隠れているボディガードの人が隠し持っているかもしれません」

「……あの人、フランスの要人じゃなくて、スーパーの人だからな」
と言いながら、海里が先に歩いていく。

 向こうもこちらに手を振ってくれた。

 心配しなくとも、あまりが攻撃態勢にないことはわかってくれているようだった。

 海里に言ったら、余計な心配だ、と言われることだろうが。
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