あまりさんののっぴきならない事情
 顔を上げると、草野が、
「なに渋い顔してんの。
 生ハムとキャロットのサンド、もうないの?」
と訊いてきた。

「すみません。
 もう売り切れちゃいました」
と言うと、草野は、あらそう、残念、と言ったあとで、

「なによ、辛気臭い顔ね。
 そういえば、あんた、昼は、ずっと此処で売ってんの?

 食べに出たりとか出来ないの?」
と訊いてくる。

「此処に居る間はずっと売ってるので」
と言うと、草野は、ああ、という顔をした。

「そうか。
 あんた、二週間しか居ないんだったわね」
と少し寂しそうに言ってくれる。

「まあ、たまにはあの店行くから」

「はい、ありがとうございます」
と頭を下げた。

 なんか嬉しいな。

 でも、どんな嬉しいことがあっても、心の奥底に、なにか引っかかっているようで、気分が晴れない。

 なんでだろうな、と思いながら、溜息をついた。
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