あまりさんののっぴきならない事情
「なんで此処に居るんですか?」
と総務の前の廊下に居た彼に問うと、服部たちが追っているのは、企業専門のコソ泥だと言う。

「社員のフリとかして、会社に入り込んで、ロッカーとかから金目のものを持って逃げるんだよ。

 データ系のものは何処の企業も警戒してるけど、最近は、そっちばっかりで、物品の方はおろそかになりがちだから、一応、警戒してもらおうと思って。

 あのカフェに何度も出没してるから、この辺りの企業には一応、お知らせをね」

「そうなんですか……」
と言うと、

「ところで、君、此処の社員だったの?」

 さっき廊下で見かけたから、総務の人に訊いてみたんだけど、と言ってくる。

「ああ、いえ。
 カフェから出張して、二週間程、秘書に研修に」

 お茶の淹れ方を皆様に教えるというより、結局、此処で、研修させてもらっている気がする、と思っていた。

 秘書室って、気配りの部署だからな。

 秋月さんとかああ見えて、指導もさすがポイント押さえてて、上手いし。

 そんなことを考えていると、
「そうなんだ?
 まあ、此処で話できてよかったよ。

 カフェの方ではちょっと。
 あまり目につきたくないんで」
と服部が言ったとき、通り過ぎかけて戻ってきた者が居た。
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