あまりさんののっぴきならない事情
「あ、もしかして、大崎さんのために、お洋服を買ってあげたかったとか?」

 大崎の店の売り上げのために自分を連れていったのだろうか。

 それなら、こんなに服を買ってくれたことにも納得いくんだが、と思っていると、海里は、素っ気なく、
「いや、あいつに、そこまでしてやらなきゃならない義理はない」
と言ってきた。

 うーん。
 じゃあ、なんでこんなに服買ってくれたんだろう? と思っているうちに、家に着いていた。

 いつの間にか、カフェの前は通り過ぎていたらしい。

「あ、此処です」
とあまりは手でその建物を示した。

「ワンルームの狭い部屋なんですが、もし、よろしかったら、お茶でもどうぞ」

 建物を見上げた海里が何故か、
「……いや、全然狭くなさそうなんだが」
と呟いていた。



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