楕円の恋。

『ほぇ〜。大きいスタジアムだね』

圭子ちゃんが目を丸くして言った。

『圭子ちゃん、そっちは次の決勝の会場、今日はこっちのサブグラウンドだよ！』

私は圭子ちゃんに説明した。

サブグラウンドと言ってもちゃんと観客席が整備されている綺麗な芝のグラウンドだ。

観客席は学生やら保護者やらで半分くらい埋まっていた。

私達はおそらく私の学校サイドであろう。中段付近に私を真ん中にして座った。

『結構、人多いね』

圭子ちゃんが驚きながら言う。

『ほらあそこ。片桐先輩がいるよ』

あかりちゃんが前方を指差して笑って言った。

『えっ？何？片桐先輩いるの？涼ちゃん隣行って来たら？』

圭子ちゃんは1人でテンションが上がっていた。

私は圭子ちゃんを落ちつかせてさっきの駅での出来事を話した。

『なんだ〜ちょっと片桐先輩と涼ちゃんの運命の赤い糸を期待したのに』

圭子ちゃんは口を尖らせ残念がっている。

『残念でしたー。あっもうすぐ始まるみたいだよ』

ベンチ前でラグビー部が円陣を組み始めた。

サッカー部の円陣とは全く違う厳かな雰囲気の円陣だった。

円陣を組んでから暫くスーッと静かな時間が流れた。

そして、いきなり、うぉーっ！と選手全員が叫んだ。

それを聞くと観客席からは大きな拍手や歓声があがった。

私達も周りにつられて拍手をした。

『す、すごいね』

圭子ちゃんが雰囲気に飲まれていた。

私はただただ無言でコクコクと頷く事しか出来なかった。

あかりちゃんも目をまん丸にしていた。

『あっ10番みーっけ！』

圭子ちゃんが呟く。

私もすぐ見つけることができた。

上のユニフォームからソックスまで黒一色。白い文字で10。

初めて見るユニフォーム姿だ。

『なんかクラスにいる時と雰囲気違うね』

あかりちゃんがニコニコして言ってきた。

少し遠いので細かい表情まではわからなかったが、あかりちゃんの言いたい事はわかった。

センターラインに両校の選手が並び試合が始まろうとしていた。