楕円の恋。
『セーフ!』

全力で走ったおかげで。私と圭子ちゃんはなんとかHRに間に合った。

息をハァハァ言わせながら席へと着いた。

圭子ちゃんは席に座った途端、机に伏せた。

私の席は窓際の後ろから二番目の誰もが羨む特等席だ。

特にこの季節は気候がいいので寝るのも気持ちがいい。

逆に圭子ちゃんは教壇の目の前の通称ゴールデンシート。

寝たらすぐバレるし、何かと先生に質問される。

まさにゴールデンな場所なのだ。

1時間目は英語。私の得意な英語。

予習はおとといバッチリしてるから大丈夫。

圭子ちゃん大丈夫かな?と人の心配までしていた。

授業中私はある事に気付いた。

窓の外をふと見ると体育で、男子がサッカーしていた。

あっ、片桐先輩のクラスじゃん。

私は授業そっちのけで、先輩を目で追ってしまっていた。

やっぱりサッカー上手だな。

体育の授業ではサッカー部は目立つ。

はぁ。やっぱカッコいいよ。簡単に諦められないよ。

私が1人でキュンキュンしていたその時。

『じゃあこの問題を、、、今井さん答えて』

先生に当てられた。

『!?』

私は驚いて、椅子がガタッと音をたてるくらい勢いよく立った。

ヤバイ全然聞いてなかった。

どの問題言ってるの?

どうしよう。

私が教科書をパラパラめくって、うろたえていると。

『3』

後ろから、私以外には聞こえないようなボリュームの声が聞こえてきた。

『さ、3番です!』

私は自信なさげに答えた。

『そうですね。この問題は引っ掛けで1番を選びたくなるんですけど、ちゃんと読むと3番が正解なんです。よく理解してます。』

先生に褒められた。

私はこっそり後ろを振り返り頭を下げた。

私はまた窓の外へ目をやった。

キーンコーンカーンコーン

『じゃあ今日はここまで、次までに問題集の今日やったところから48ページまで予習しておいてください』

今日の授業は全然耳に入らなかった。

片桐先輩のキラキラ輝いたプレーばっかり見ていた。

私は席を振り返り右手で頭をかきながら改めてお礼を言った。

『影山君さっきはありがとう。マジ助かった。』

『全然いいって。それより今井さんずっと外見てる方が気になった。誰見てたの?うちの先輩だったら紹介するよ?』

影山君が頬づえをついて、ニヤニヤして聞いてきた。

この人は影山晴人君

ラグビー部の1年生でレギュラー。

うちのラグビー部は毎年県ベスト4以上までいく強豪だ。

背番号は10番をつけていたのを見たことがある。

前にラグビーの10番はサッカーの10番と似たような花形選手だよとラグビー部のマネージャーの先輩が教えてくれた。

でも、私は片桐先輩のつけている9番が花形だと思っている。

影山君は綺麗な整った顔をしていて、180㎝くらいで筋肉質だがすらっとしている。

ラグビー部のマネージャーの先輩いわく、彫刻みたいな体らしい。タビデ像みたいなイメージ。

他校にもファンがいっぱいいるらしい。

私はラグビーする人はゴリラみたいな体のイメージがあったけど、影山君でそのイメージは取り除かれた。

そんな影山君と私は初めてちゃんと話したかもしれない。

『違うよ!今日いい天気だなぁ!気持ちいいなぁって外見てたんだよ』

私は意味のわからないことを言ってごまかした。

『そうなんだ。後ろから見てたら、ずっとグラウンド見てたからさ。』

影山君は不敵な笑みでこっちを見る。

『違うよ〜。そんなんじゃないよ〜。』

私は手を顔の前で振って、ごまかすことが精一杯だった。

『素直じゃないなぁ〜』

影山君は笑いながら呆れたように言う。

その時

『晴人〜パン買い行こうよ〜』

クラスの男子が影山君を呼んだ。

『おー行く行く!じゃあまた後でゆっくり聞かせてね』

そう言い残し影山君は教室を出て行った。
< 4 / 72 >

この作品をシェア

pagetop