楕円の恋。
『私の話はおしまい。話変わるけど、今週席替えだね』

あかりちゃんがパックジュースを吸いながら言った。

あっもうそんな時期か。

私はあの特等席を変わらなければいけない事が少し残念だった。

『涼ちゃんとあかりちゃんには申し訳ないけど、私がどんなにその日を待ちわびていたか2人にはわからないでしょ?授業中寝る事もできず、何かと先生には当てられる。辛い日々を過ごしたわ』

圭子ちゃんが両手で顔を隠し嘘泣きをした。

『よく頑張りました。よしよし。でも、どこの席でも授業中は寝ちゃダメだよ』

あかりちゃんが圭子ちゃんの頭を撫でる。

『次こそ、壁ぎわの後ろの席を狙うんだ!』

圭子ちゃんは拳を握り、私にはその目に炎が見えるようだった。

『涼ちゃんも席替え前にアクション起こさないとね。連絡先知らないんでしょ?』

あかりちゃんがニコニコして言った。

『影山君の事?』

私はペットボトルのお茶を一口飲んだ。

圭子ちゃんはそれ以外誰がいるんだよと言いたそうな目でこっちを見てくる。

『せっかくよく話すようになったから、機会があったら聞いてみる』

『おー涼ちゃん。成長した』

圭子ちゃんが拍手をして言った。

『あーぁいいなぁ。あかりちゃんはサッカー部のイケメン、涼ちゃんはラグビー部のイケメン、私の王子様はどこにいるの〜』

圭子ちゃんが両手を頭の後ろにやって呟いた。

『帰宅部』

あかりちゃんが微笑んで呟いた。

『いやぁ〜!運動部にして〜!』

圭子ちゃんは顔を横にブンブン振った。

それを見て私はあかりちゃんと顔を見合わせて笑いあった。
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