楕円の恋。
部室に着くと私は急いで着替えポケットにあかりちゃんから預かったお手紙を大事にしまって出て行った。

グラウンドに着くと

『涼〜。聞いてくれた?』

田中先輩がスパイクの靴紐を結びながら笑顔で言う。

もぅ。

この人はその事しか頭にないのかよと私は呆れて無言であかりちゃんから預かったお手紙を突き出した。

『本物?本物?』

田中先輩は目をキラキラさせながら聞いてきた。

『なんで私が偽物渡すんですか?』

私は小さくため息をついた。

『ははは。サンキュー!』

田中先輩はパッと私の手からお手紙を取ると部室にダッシュで帰って行った。

あまりの早さに私は苦笑いをした。

それを遠くで見ていた片桐先輩は片手を顔の前に立てて口パクで《ありがと》と言ってくれた。

私はそれに対して笑顔で返した。

5分くらいだろうか。

田中先輩がダッシュで戻ってきた。

『しゃーっ。今日もやるぜー!!』

田中先輩がグラウンドへ叫びながら走って行った。

片桐先輩は苦笑いしている。

私は今日田中先輩だけGGダッシュ100本してくれないかなと切実に思った。
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