楕円の恋。
田中先輩達との待ち合わせの場所は駅から少し歩いたボーリング場だった。

ボーリング場にはバッティングセンターやフットサルコートも併設されている。

『あかりちゃん〜!!』

聞き慣れた声があかりちゃんを呼ぶ。

『あっ田中先輩』

あかりちゃんがちょこんと手を振った。

そこには服をバシッと決めて、ワックスで髪を遊ばせている田中先輩が満面の笑みでいた。

『ヤバイ!ま、眩しい』

圭子ちゃんは田中先輩のあまりのかっこよさに直視できていなかった。

確かに、いつも以上に決めている田中先輩はかっこよかった。

私は田中先輩の事を知らなければ惚れてしまいそうなくらいキラキラと輝いていた。

その眩しい田中先輩の後ろには、これまた見慣れた顔が並んでいた。

『こっちが片桐、こっちが大野。こっちがあかりちゃん。こっちがお友達の圭子ちゃん。』

田中先輩がそれぞれ紹介した。

『片桐先輩、大野先輩お疲れ様です』

私は後ろの2人にペコッと頭を下げた。

『あー片桐。今涼の顔見た?なんでお前が来たんだよって顔した。圭子ちゃん、あかりちゃんよろしくね』

『大野先輩!そんな事私微塵も思ってない!』

私は全力で否定した。

大野先輩は田中先輩達と同じサッカー部の2年生。

大野先輩は部活中重い荷物をさりげなく持ってくれたり、いろいろと気にかけてくれる優しい人である。

顔は田中先輩や片桐先輩ほどイケメンではないがいつも笑顔を振りまいてくれる。

私はそれより、片桐先輩がちゃんと智美さんにこのトリプルデートの事を言っているのが心配だった。

こんなところ見られたりしたら智美さんと喧嘩になるんじゃないかと。

ただ、片桐先輩は田中先輩が頼みこんで連れて来られただけだと思うけど、

私が智美さんの立場だったら悲しくなる。

私だって智美さんの事大好きだから隠し事はしたくない。

私がそんな事を考えていると。

『ほら、何難しい顔してるの?行くぜ』

片桐先輩が笑顔で声をかけてきた。

他の4人は談笑しながら、もう入口に入ろうとしていた。

『あー行きます』

大丈夫。やましい気持ちは全くないんだから。

私は片桐先輩と少し駆け足で、前の4人に合流した。
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