そのキスで、忘れさせて









余興の曲だけの予定だったのに、結局そのDVD全てを見てしまった。

TODAYに釘付けになって、遥希に狂わされて、生きた心地がしなかった。

まるで抱かれたような甘い余韻に浸ってから……

ようやく正気に戻る。

練習しなきゃ!






だけど、あのダンスは、あたしには無理があると思う。

一週間で仕上げる?

冗談じゃない。

だいいちバク転なんて出来ないし、側転さえ……






そう思って、おもむろに助走をつけて手を上げてみた。

勢いで床に手を付き……



「きゃっ!」



あたしの声と、グキッという手の関節音が広い部屋に響いた。




そして、



ドスン……


大きな音とともに身体に痛みが走った。






……無様だ。

こんな姿、遥希に見られなくて本当に良かった。



< 204 / 384 >

この作品をシェア

pagetop