そのキスで、忘れさせて




誠はそれに関して何も言わなかった。

そして、



「携帯……」



話題を変える。

そんな前にイライラする。

あたし、どうしてこんな人が好きだったんだろう。

どうして全てを賭けて結婚したいと思ったんだろう。





「携帯……彼氏?」




イライラしながらも通話を切ろうとした。

だけど、



「美咲」



電話口から遥希の声が聞こえた。

あたしは慌てて電話に耳を付ける。

遥希の声はいつものように落ち着いていて、あたしをホッとさせた。




「俺が話、しようか?」




あたしはゆっくり、誠に携帯を差し出した。




< 231 / 384 >

この作品をシェア

pagetop