そのキスで、忘れさせて
ハルキは来ないかもしれない。
どんな男かも……顔すらしっかり覚えていないほどだから。
待っているだけ時間の無駄かもしれない。
そんな考えが頭を過ぎった時……
「マジで来たのか」
昨日聞いた、その声が聞こえた。
男性の中でも、割と低めのその声。
少し荒っぽいけど、胸にじーんと響く。
それにしてもこの声、前にも聞いたことがあるような気がする……
何となく顔を上げたあたしの前に、彼は立っていた。