そのキスで、忘れさせて




「美咲にしかしねぇよ」




遥希は静かに言って、あたしを抱き寄せる。

その、剥き出しの胸板に挟まれて、意識が遠のいてしまいそう。





やっとのことで理性を保っているあたしの耳元で、遥希は甘く囁く。




「このまま……いいか?」



「だっ……駄目だよ!

恥ずかしい!!」




必死に抵抗するが、遥希が離してくれるはずもない。





「Fのことなんて、忘れてさせてやる。

俺のことしか考えられねぇほど、俺で埋め尽くしてやる」





何言ってるの。

あたしには、もう遥希しかいないのに。

こんなに後戻り出来ないほど……

狂おしいほど愛している。



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