そのキスで、忘れさせて





その吐息が耳にかかり、飛び上がりそうになった。

遥希はそうやってすぐ、あたしを虜にしていくんだから。

あたしの理性を飛ばし、遥希で埋め尽くしていくんだから。





不意に遥希はあたしを掴み、ぐるっと回転させる。

目の前に綺麗な遥希の顔があって、その鍛えられた身体があって、動揺しすぎて溺れそうになった。




「ずるいよ、遥希」




真っ赤な顔で言うあたしを、熱っぽい瞳で見つめる遥希。




「ずるいずるい!

遥希はかっこいいし、そうやるだけで、女の子は落ちちゃうよ?」





あたしはこんなに余裕がないのに、遥希はどうして余裕なの?

遥希は緊張しないの?

恥ずかしくないの?



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