そのキスで、忘れさせて








遥希はやっぱり用事があるとか言って、すぐに帰っていった。

あたしの家に来るということは、遥希と関係を持つかもしれない、なんていう想像は見事に外れた。

だけど、ホッとした。

遥希と関係を持つなんて、今のあたしには無理かもしれない。

びっくりすることが多すぎて。






「落ち着いたら、荷物元彼に返しておけよ」




帰り際に遥希が言う。

やっぱり誠の荷物に気付いていたんだと、気まずく思う。




「不安なら、俺が一緒にいてやってもいい」



「そんなのごめんだよ!」




あたしは叫んでいた。

当然だ。うちにTODAYの遥希がいたら、誠はひっくり返るかもしれない。

それに……

遥希と付き合ってるなんて思われたくなかった。

そう思ったのは、まだ誠の存在を引きずっているからに違いない。


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