肉食御曹司に迫られて
「海好きなんだ?」
しばらくして、隣の湊が声をかけてきた。

「うん、好き、湊さんは?」

「湊でいいよ、〝さん“ってなんか老けた気分になる。」
と、少し渋い顔をして、そして笑いながら、
「そんなに、歳をとってるとは、思ってないから」
と、にっと笑った。

「じゃあ…、湊はいくつなの?」

いつもなら、絶対に初対面の人を呼び捨てにしたりしない奈々だったが、いつもと違う場所、自分の事を知らない人ということもあり、躊躇なく言われた通り呼び捨てにした。

「…内緒。」
「何それ!」
「教えて意外にやっぱりおじさん!って思われた嫌だし!」
と笑った湊を奈々はまじまじと見た。

(― 同じぐらい?うんん、27?28歳?ぐらい)

ジーンズに、ネイビーのパーカーにスニーカーという服装は、このあたりの海にいそうな、ラフな格好だった。
しかし、高い身長と、均整のとれた体格、そしてなにより、その整った顔が年齢をわからなくしていた。
大学生と言われれば、そうだし、落ち着いた瞳をみると、年上のようにも見える。
奈々は足元から、緩やかにゆれる少しパーマのかかったような黒髪までを、目で追った。
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