肉食御曹司に迫られて
樋口 湊 30歳。世界に展開する樋口グループの次男にして、アメリカの大学を最短で卒業後、アメリカの大手コンサルタント会社に就職し、米国公認会計士の資格を取得。基礎から応用といえば聞こえがいいが、法律ギリギリのことも詰め込んできた。


5年前、起業しこの会社を動かし始めた。
倍はあるような歳の、国籍を問わない社長や、役員と渡り歩いてきた。

父からはグループ会社に入るよう強く言われたが、敷かれたレールが嫌で、18歳の時単身アメリカに渡った。
父の意思に背くことになったが、なぜ自由に生きる権利がないのかわからなかった。
その点、兄は自分の義務と責任をきちんとわかっているようで、父の会社に入った。
別に、父も兄も嫌いではない。会社に入りたくないわけでもなかった。でも、決められたくなかった。
実力社会で親の七光りと言われたくなかった。
だから、樋口グループの人間ということは、表には出していない。




役員専用フロアにの着くと、秘書の松宮がIDカードをかざす。
扉があき、右手前の部屋が秘書室、その奥が副社長室、廊下を挟み反対側の部屋が社長室という作りになっている。

「社長、会議は10:00からです、またご連絡致します」
そういうと、松宮は頭を下げた。
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