肉食御曹司に迫られて
「じゃあ、一緒してもいい?」
奈々は少し間をあけたが、
「もちろん。」
と笑った。

二人で、こないだの海岸に場所を移す。
「奈々ちゃんって何している人?」
「何って…ふつうの会社員だよ。朝起きて、仕事に行って、週末来れるときは、ここに来る。それだけ。」
と少し寂しそうに笑った気がした。
しかし、すぐいつもの活発な笑顔に戻り、

「湊は何している人?」
湊はとっさに嘘をついた。
「俺も、普通のサラリーマン、朝起きて、仕事に行って、週末ここに奈々ちゃんに会いに来る。」

朝起きて、仕事に行くことに嘘はない。
そして奈々も嘘をついている?それともピアノで生計を立てているわけではない?
いろいろ思っていると、

綺麗な屈託のない笑顔で、
「ホント、上手いんだから。何もでないよ?」
と笑った。
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