肉食御曹司に迫られて
少し遡り、湊はようやく【仕事が忙しい】という内容だけ、奈々にメッセージを入れた。
あのキスの後に、このメッセージはマズイ気はしたが、事実あの後から、怒涛のように仕事が入り、寝る間もなく仕事に追われていた。

これでも、大企業のトップとしての責任も意地もある。

どうしても自分の素性と、ピアノを弾く奈々を知っている事を言う気にはならなかった。
言ってしまうと、終わってしまう…そんな予感がしていた。

それは、奈々の隠してる部分のせいか、自分の立場のせいか…。

(ー どっちもだな。俺には責任もある。)

興味本意で近づいたことを、悔いるべきか、会えたことに感謝するか、解らずにいた。

もう、興味だけではない自分の気持ちを、認めざる得なくなり、胸が苦しくキリキリと痛んだ。

(― 人を愛することなんて必要ない。愛することもないと思ってたのに。)
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